自閉症スペクトラム症(ASD)
自閉症スペクトラム症は、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害の総称であり、脳の特性から起きる発達の偏りであり、しつけの失敗や性格の問題で起きるものではありません。
次の三大特徴があります。
①社会性の障害
*対等で相互的な対人関係がもてない
*人との関わり方が一方的である
*場に相応しい行動がとれない
*年齢相応の常識が身についていない
*感情を他者と共有することが困難である
*自分の感情に気づけない
②コミュニケーションの質的障害
*独り言(不安や不快感に耐えるため、気持ちを切り替えるための手段となっていたり、非常に高揚している場合)
*ペダントリー(硬い、難しい、くどくどしい言い回し)
*言い間違いの定着
*ジャーゴン(どこの国の言葉にもない音の連なりを、話し言葉のように話す。例;「パボッピ」)
*立場によって言葉を変えることが難しい。(例;ただいま→お帰り)
*その子だけの特別な言葉を用いる
*過度に写実的な擬音語
*オウム返し
*パターン的な言い回し
*会話の相互性の乏しさ
*話している程には理解できない
*相手の頭にある情報への配慮の困難
*理解している単語に偏りがある
*言葉の音に過度に注意が向いてしまう
*文脈で補うことの乏しさ
*一つの言葉に過度に注意が向いてしまう
*慣用表現がわからない
*視線の問題
*指さしの問題(要求、共有したい等、コミュニケーションのためではない)
*表情、ジェスチャー、体の向き等でコミュニケーションを補足することの不足、不適
③イマジネーションの障害
*決まっていないこと、見通しがもてないことに対しては、不安でイライラする
*いつも通り、予定通りであることが安心できる。思いがけない事態には混乱する
*状況に応じた結果を予測できない
*応用が利かない、過度に一般化する
*考えや気持ちをリセットするのが苦手である
*自分の秩序を守りたい、他者に秩序を守って欲しい
*興味が偏る
*何かを想像するとき、映像を思い浮かべることが難しい
*特定の種類のものについて情報を集めるのを好む
*邪魔が入って行動を中断されると、すぐにそれまでやっていたことに戻れない
*子供と「○○ごっこ」をして遊ぶことが苦手である。
*自分の空想の世界に一度は入ってしまうと、現実世界への切り替えが難しい等々
三大特徴以外の主な特徴
*感覚(聴覚、触覚、臭覚、味覚、痛覚)の異常
*運動の異常(姿勢の悪さ、フニャフニャしている、つま先歩き)、協調運動の不器用さ、手先の不器用さ
*食行動の異常
*睡眠の問題
*性的な問題(低下、異常亢進)
診断
成育歴、現在・過去の困り事の聴取や心理検査(WAIS―IV/WISC―IV、PFスタディー、バウムテスト、AQ)などから総合的に診断いたします。
治療
薬物療法が有効な症状には提案いたしますが、薬だけで治らない症状に対しては支援の仕方をお伝えしています。基本的な考え方として、特性を抹消しようとするのではなく社会生活を送る上での困難を減らすことを目標とします(トップダウンアプローチ)。
温かい目で見守ることは、何もしないでいることであり、適切に働きかけることが必要です。
特に学習の問題や問題行動(乱暴にふるまう、盗む等)に対しては、当院の発達障害に詳しい医師や公認心理士(臨床心理士)が具体的にアドバイスしています。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
不注意、落ち着きのなさ、衝動性を特徴とする病気です。不注意が目立つタイプ、落ち着きのなさや衝動性が目立つタイプ、両方目立つタイプがあります。小さなお子さんは、これらの症状を理由に受診されることが多いですが、ASDが合併していることが少なくありません。
治療
まず保護者や学校にこの病気を理解してもらう等、支援の体制を整え、薬物療法を併用することにより、多くのかたが生活を改善できています。
起立性調節障害(OD)
主に小児期に発症する起立時の血圧、心拍異常ですが、大人でもみられます。
不登校の3~4割に併存するとされています。
朝起きられない、立ちくらみがする、頭が痛い、疲れやすい、失神などがあれば、以下の起立性調節障害が疑われます。
*起立直後性低血圧
*遷延性起立性低血圧
*体位性頻脈症候群
*血管迷走神経性失神
(*脳血流型、高反応型)
治療
保護者の多くは、朝起きれないのはゲームやスマホのやり過ぎ、夜更かし、学校嫌いが原因と考えて怠けているだけだと𠮟責したり、無理に起こそうとしたりして親子関係が険悪になることが少なくありません。
まずは、保護者にODは身体疾患であり、気持ちの持ちようだけでは治らない病気であるとの理解を促します。
また学校側にもODの理解を深めてもらい受け入れ態勢を整えます。
その上で以下の非薬物療法をおこない、効果がなければ、昇圧剤、自律神経調整剤、安定剤などの薬物療法を提案いたします。
*頭を下げてゆっくり起き上がる
*水分は一日2リットル摂取し、塩分を多くとる
*眠くなくても、早めに床につく
強迫性障害(OCD)
つまらないことだと分かっていてもある行為を止められず、繰り返していないと不安で仕方なくなります。
例えば、繰り返し手を洗い続ける、火の元や施錠を何度も確認するといったものがあります。
お子さんの場合、大人のOCDと比べ衝動性が目立ち、家族を巻き込んだり、自我違和感がない傾向にあります。
OCDの治療は認知行動療法が最も効果的であり、次いで薬物療法の順とされていますが、症状が強すぎて認知行動療法を受けることができないお子さんもいます。
その場合、まず薬物療法により症状を軽減することが優先されます。
この病気の本質は不安なので、医師が曝露反応妨害法として不安との付き合い方をお伝えしています。また公認心理士が子供専用の部屋で認知行動療法や遊戯療法を定期的に行っておりますので気軽にご相談ください。
チック障害、習癖
チックは、目をパチパチとさせたりするなどの運動チック、咳払いや鼻鳴らしを繰り返す音声チックに分かれ、それぞれに単純性、複雑性に分かれます。ほとんど持続時間が一年未満の一過性チックですが、慢性化するチックもあり、トゥレット症候群が有名です。
チックには、チックをせずにはいられないといった抵抗しがたい感覚を伴うことがあります。
習癖とは、簡単に言えばくせです。どのお子さんにもくせはありますが、その中で繰り返されることで身について固定してしまった行動です。指しゃぶり、爪かみ、抜毛癖が有名ですが、夜驚症、夢中遊行症、過食、異食、遺尿症、吃音、選択的緘黙なども含まれます。
チックまたは習癖は心因性ではありませんが、心理的な影響を受けるといった特徴があります。
治療
チックに対する薬物療法は少量の抗精神病薬から開始することが最もエビデンスがあるとされています。
またチックや抜毛壁に対し有効とされるハビットリバーサルなどの認知行動療法や公認心理士による遊戯療法をおこなっています。
不登校・ひきこもり
不登校の背景要因には、上記精神疾患などの多様な精神医学的な要因と友人関係、教師との関係、家族関係などの社会心理的要因またはその両方が関連しあっている場合があります。
治療としては、それぞれの要因に対して対応することになります。